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生活防衛資金の作り方

生活防衛資金の作り方

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会社を辞めて最初の冬、僕は通帳の残高を1日に何度も見ていました。収入は止まっている。支出だけが同じ顔をして毎月出ていく。家賃の引き落とし日が近づくと、前の晩から落ち着かない。あのころ足りなかったのは腕でも運でもなく、「何か月なら大丈夫か」を数字で言える状態でした。

生活防衛資金は、増やすための資金ではありません。判断を落ち着かせるための資金です。ここでは公表されている統計と制度の数字を並べて、自分の月数を出すところまでを書きます。金額の正解を決める記事ではないので、最後は自分の家計の数字に置き換えてください。

この記事で出すもの

自分の月の支出/収入が止まったときに公的な支えが続く日数/掛け算で出す目標額/置き場所の分け方。この4つを数字にして紙に書くところまで。

守るための資金と、増やすための資金は置き場所から分ける

生活防衛資金とは、収入が一時的に止まっても暮らしを続けられる蓄えのことです。値上がりを狙う資金ではありません。だから置き場所も、増える場所ではなく、いつでも引き出せる場所を選びます。

この2つを分ける理由は、気持ちのほうにあります。混ざっていると、相場が荒れた日に「これは生活費だ」と思った瞬間、判断が急ぎます。急いだ判断は、たいてい後から見て遠回りです。線が引いてあれば、荒れた日でも「ここから下は触らない」とだけ確認して、画面を閉じられます。

もうひとつ、分けておくと効くのは家族との話です。ひとつの口座にまとめていると、残高が減ったときに「相場で減ったのか、暮らしで減ったのか」を説明できません。うちでは、防衛資金の口座だけ残高を共有しています。相場のほうは、月に一度まとめて話す。分けてからのほうが、いさかいは減りました。

平均ではなく、自分の支出から始める

最初にやるのは、月にいくら出ていくかを実額で出すことです。感覚では必ず低く見積もります。僕も最初の見積もりは実際より4万円ほど少なく、3か月目に足りなくなりました。

桁の感覚をつかむために、公的な平均も見ておきます。総務省統計局の家計調査報告(家計収支編)では、2025年(令和7年)平均で、二人以上の世帯の消費支出は1世帯当たり1か月平均314,001円でした。2026年7月分は301,245円で、前年同月比は実質3.6%の減少、名目では1.5%の減少です。この7月分は2026年9月4日に公表されています。

この数字は二人以上の世帯の平均です。単身なら下がり、子どもがいれば上がる。地域でも変わります。平均を自分の額として使うと、たいてい現実と合いません。使い方としては、自分で出した額が平均から大きく離れていたときに、計算間違いを疑う物差しくらいがちょうどいい。

自分の額を出すときに落としやすいのが、毎月は出ていかない支払いです。年に一度の保険料、車の税金、家電が壊れたときの買い替え。僕は最初の見積もりでこれを全部忘れていて、あとから月あたり1万円ほど上乗せすることになりました。年に1回のものは12で割って、月の額に足しておく。これだけで見積もりの精度はだいぶ上がります。

ちなみに同じ調査では、勤労者世帯の実収入も出ています。2025年平均で1世帯当たり653,901円、2026年7月分は689,476円でした。収入と支出を並べて見ると、毎月どれだけ残る形になっているかが見えます。残らない形のまま防衛資金を作ろうとしても、積み上がりません。

収入が止まったとき、公的な支えは何日続くか

何か月分を貯めるかは、収入が止まったときに他から入ってくるものがあるかで変わります。会社員として働いていた人には、雇用保険の基本手当があります。

ハローワークインターネットサービスの基本手当の所定給付日数を見ると、日数は離職の理由と被保険者であった期間で変わります。倒産・解雇等以外で離職した一般の受給資格者は、被保険者であった期間が10年未満で90日、10年以上20年未満で120日、20年以上で150日です。

区分被保険者であった期間所定給付日数
一般の受給資格者10年未満90日
一般の受給資格者20年以上150日
特定受給資格者(45歳以上60歳未満)20年以上330日
就職困難者(45歳以上65歳未満)1年以上360日

自分から辞めるのか、会社の都合で辞めることになるのかで、倍以上の開きが出ます。ここを知らずに「失業したら手当が出るから半年は平気」と考えていると、90日で終わる側だったときに計算が崩れます。

それから、もらえる額のほうも満額ではありません。同じサイトの基本手当のページによると、1日あたりの金額は、離職した日の直前の6か月に毎月きまって支払われた賃金の合計を180で割った額の、およそ50〜80%です。賞与は含みません。つまり、手当が出ているあいだも、暮らしの水準は前と同じにはならない。この差を埋めるのが、まさに生活防衛資金の役目です。

受けるための条件も、先に見ておく

日数の表だけ見て安心すると、手前でつまずきます。同じサイトの基本手当のページには受給要件が書かれていて、離職の日以前2年間に被保険者期間が通算して12か月以上あることが原則です。倒産や解雇にあたる特定受給資格者などは、離職の日以前1年間に6か月以上でも受けられます。

被保険者期間の数え方にも決まりがあります。離職日から1か月ごとに区切った期間のうち、賃金支払いの基礎となった日数が11日以上、または賃金の支払の基礎となった時間数が80時間以上ある月を1か月として数えます。働き方が月によってばらつく人は、自分がどう数えられるかを在職中に確かめておいたほうがいい。

受給期間にも期限があります。原則として離職した日の翌日から1年間です。所定給付日数が330日の人は1年と30日、360日の人は1年と60日。手続きを先延ばしにすると、日数が残っていても期間が尽きることがあります。

掛け算で出す

ここまでの数字を掛け算にします。月の支出に、耐えたい月数を掛けるだけです。数字の重さを見るために、家計調査の2025年平均である1か月あたり314,001円で機械的に計算してみます。

月数314,001円で計算した額どんな想定か
3か月942,003円会社員で、次が決まっている転職の間をつなぐ
6か月1,884,006円自己都合で辞め、給付日数が90日の側だった場合
12か月3,768,012円収入が自分の裁量に左右される働き方をしている場合

もちろん、自分の支出が22万円なら3か月は66万円です。僕はいま12か月分を置いています。専業には基本手当の受け皿がないからで、会社員のころは6か月分でした。同じ人間でも、働き方が変わると必要な月数は変わります。

月数を決めるときは、収入が止まる理由を2つ以上想像してみてください。仕事がなくなる場合と、体調で働けなくなる場合では、必要な長さが違います。両方を並べて、長いほうに合わせておくと、あとで慌てません。

月数で持つことのいいところは、収入が上がっても下がっても目標が自動で動くことです。金額だけで「300万円」と決めてしまうと、暮らしが変わったときに多すぎたり足りなかったりする。月数で持っていれば、支出が増えた月に目標も一緒に上がります。年に一度、正月あたりに支出を数え直して、目標額を書き換える。僕はこれを毎年1月の最初の週にやっています。

置き場所は、増える場所ではなく出せる場所

置き場所の条件は3つです。すぐ引き出せること。元本が動かないこと。日常の支払いに使っている口座と別であること。この3つを満たすなら、普通の預金で十分です。

利回りを気にしたくなりますが、生活防衛資金の役目は増えることではありません。必要なときに全額そのまま出てくることです。値動きのあるものに置くと、いちばん引き出したい局面で価格が下がっている、ということが起こりえます。

僕は、生活防衛資金を日常の口座とは別の銀行に置いています。同じ銀行の別口座だと、アプリを開いたときに視界に入って、つい動かしたくなる。別の銀行にして、アプリも入れていません。見えない場所に置くのは、意志の弱さを前提にした設計です。

ただし、引き出せなさすぎるのも困ります。窓口に行かないと出せない形にしてしまうと、本当に必要なときに間に合いません。目安は、その日のうちに全額が動かせること。急いで出せるけれど、うっかりでは出さない。この2つのあいだに置くのがちょうどいいと思っています。

証拠金と混ぜない

相場に使う資金と生活防衛資金を同じ口座に置くと、線が引けません。追加で入金したくなったとき、目の前にあるお金に手が伸びます。1回でも越えると、その線は次から機能しなくなる。

分け方は単純です。生活防衛資金は別の銀行。相場に出す資金は取引口座。この2つの間に、自動の入金設定を作らない。僕は一度、自動入金を設定していた時期に、想定より多く入金してしまったことがありました。手動で振り込む一手間が、そのまま歯止めになります。持つ量の決め方は自分のリスク許容度を知るのほうに書きました。

作る順番は、削るより先に増やさない

作り方の順番も書いておきます。先に支出を出す。次に月数を決める。それから、毎月いくら回せるかを決める。この順番でやると、目標額と到達までの月数が同時に出ます。

注意したいのは、貯める間に相場へ出す額を増やさないことです。増やすと、貯まる速度が遅くなるだけでなく、負けた月に防衛資金へ手を伸ばす確率が上がります。貯め終わるまでは、相場は練習の場として小さく続ける。僕はこの期間を9か月とって、その間は量を増やしませんでした。お金の置き場所全体の整理は場所に縛られない働き方とお金の管理にもまとめています。

守りの側を数字にしてから、道具を選ぶ

防衛資金の月数が決まると、相場に出せる上限も自動的に決まります。取引環境を比べるのはそのあとで十分です。各社の条件は変わるため、確かめるときは公式サイトの最新の表示をご覧ください。

最後に、この表を埋めてください

解説をまとめる代わりに、空欄の表を置いておきます。右の列に自分の数字を入れて、紙かメモに残してください。埋まった時点で、この記事の目的は果たされます。

項目参照する場所自分の数字
月の支出家計簿(平均は家計調査で確認)    円
離職したときの所定給付日数ハローワークインターネットサービス    日
公的な支えが尽きるまでの月数給付日数を30で割った数    か月
耐えたい月数働き方と家族構成から自分で決める    か月
目標額月の支出×耐えたい月数    円
いまの残高生活防衛資金として分けている口座    円
毎月回せる額収入から支出を引いた残り    円
到達までの月数(目標額-いまの残高)÷毎月回せる額    か月
涼
涼(りょう)
ノマド・専業トレーダー。拠点を一つに決めず暮らしながらFXと向き合っています。派手な成功談も根拠のない自由論も書かず、お金と働き方の現実的な距離感を等身大に綴っています。

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