
場所に縛られず働くなら知っておきたいお金の管理
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場所に縛られない働き方は、いま日本でどれくらいの人がしているのか。総務省の令和7年通信利用動向調査の結果(令和8年5月29日公表)に、その割合が載っています。企業等に勤める15歳以上の個人のうち、過去1年間にテレワークを実施したことがあると答えた人は26.9%。4人に1人です。
僕は会社を離れてから、拠点を決めずに暮らしています。場所が自由になって最初に困ったのはお金の管理でした。会社員のときは、税も保険も誰かが先に引いてから振り込まれてくる。それが全部、自分の口座を通るようになる。この記事は、その通り道をどう分けたかの話です。
テレワークをしている個人の割合/企業の導入率との差/産業と資本金規模による開き/副収入の申告が要る線/住民税の徴収方法を選べる条文の場所。
会社は増やしたのに、個人は減った
同じ調査で、テレワークを導入している企業の割合は50.1%。前年から2.8ポイント増えて、はじめて半数を超えました。ところが実際に実施した個人のほうは26.9%で、前年の28.2%から1.3ポイント減っています。
制度としては広がり、使う人は減った。この2つの数字が逆を向いていることが、いまの「場所の自由」の実態だと思います。導入されていることと、使えることは別。会社の欄に丸が付いていても、自分の部署でその丸が有効かどうかは別の話です。
| 指標 | 令和7年 | 令和6年 |
|---|---|---|
| テレワークを導入している企業の割合 | 50.1% | 47.3% |
| テレワークを実施したことがある個人の割合 | 26.9% | 28.2% |
いちばん高い産業といちばん低い産業のあいだには、60.3ポイントの開きがある
企業の導入率を産業別に見ると、差が大きい。情報通信業が92.8%、金融・保険業が81.9%、不動産業が66.3%。いちばん低いのは運輸・郵便業の32.5%で、情報通信業との差は60.3ポイントです。
導入していない企業に理由を聞いた結果も出ていて、「テレワークに適した仕事がないから」が80.4%で最も高い。実施していない個人のほうも、理由の1位は「テレワークに適した仕事ではないため」で62.0%、次が「勤務先にテレワークできる制度がないため」の38.1%でした。制度の問題より、仕事の中身の問題だと答えている人のほうが多いということ。
ちなみに導入した企業のうち、導入目的に対する効果が「非常に効果があった」または「ある程度効果があった」と答えたのは83.4%。やってみた側の評価は高い。それでも全体が半分で止まっているのは、やれる仕事とやれない仕事の線が、業種のところで引かれているからです。
小さい会社ほど無い
規模でも分かれます。資本金1,000万円未満の企業の導入率は19.5%。1,000万円〜3,000万円未満が35.9%、3,000万円〜5,000万円未満が45.6%。会社が小さいほど、場所の自由は制度として用意されていません。
ここは自分で仕事を持っている人にとっては逆の話にもなります。会社に用意してもらえないなら、自分で用意するしかない。僕が独立してからの3年で使った作業場所は、自宅、コワーキング、宿のロビー、駅の待合の4種類でした。通信が細い場所で為替の画面を開くのは、それだけでリスクになります。場所の自由には、回線の質という別の条件が付いてくる。
導入した理由の1位は、いまも感染症への対応だった
企業がテレワークを入れた目的も同じ調査に出ています。最も高いのは「新型コロナウイルス感染症への対応(感染防止や事業継続)のため」で61.6%。次が「勤務者のワークライフバランスの向上」の53.8%、「障害者、高齢者、介護・育児中の社員などへの対応」が33.4%、「人材の雇用確保・流出の防止」が23.9%と続きます。
1位は変わっていませんが、前年からの増え方が大きいのは2位以下のほうだと概要には書かれている。きっかけは感染症で、残った理由は暮らしのほう、という順番です。実施している人の形態でいうと「在宅」が92.6%で最も高い。場所の自由と言いながら、実際に使われているのはほぼ自宅という結果でした。
導入していない企業の理由の2位は「情報漏えいが心配だから」で17.1%。前年から3.9ポイント増えています。回線と端末の話が、導入の足を引っぱる側に回っている。自分で仕事をする側にとっても、ここは同じ課題です。
やりたい人は、未実施者の19.4%
もうひとつ、読んでいて手が止まった数字があります。テレワークを実施していない人のうち、実施を希望すると答えたのは19.4%。残りの8割は、希望していません。
場所の自由を欲しがっているのは、思っているより多数派ではない。僕はこの数字を見て、自分の書き方を少し変えました。場所を選べることが誰にとっても良いことだという前提で書くと、8割の人には関係のない話になります。欲しい人にとっては切実で、そうでない人には何でもない。それくらいの温度で扱うのがちょうどいい。
自由になると、税の通知は自分に来る
会社員のあいだは、税と社会保険料が引かれた後の金額だけを見ていればよかった。自分でやるようになると、その前の金額が入ってきます。国税庁のタックスアンサーNo.1906には、給与所得者の副収入について、こう書かれています。
年末調整が済んでいる給与所得者であっても、その給与所得以外に副収入等によって20万円を超える所得を得ている場合には、確定申告をすれば税金が還付される人を除いて、確定申告が必要となります
国税庁タックスアンサー No.1906 給与所得者がネットオークション等により副収入を得た場合〔令和8年4月1日現在法令等〕
20万円を超えるかどうかは、売上ではなく所得で見ます。同じページには、ネットオークションやフリマアプリを使った個人取引による所得、自家用車などの資産の貸付けによる所得、ベビーシッターや家庭教師などの人的役務の提供による所得が、一般的には雑所得に当たると並んでいる。生活の用に供している資産の売却は非課税で、損失は生じてないものとみなされる、という注も付いています。
住民税をどちらで納めるかは、条文で選べる
会社に副収入を知られたくない、という話をよく聞きます。ここは気持ちではなく条文の話です。地方税法第321条の3の第1項は、給与所得者の市町村民税を特別徴収の方法によって徴収するものとする、と定めています。第2項には、給与所得以外の所得がある場合に、その分も合算して特別徴収できるという規定が置かれ、そのただし書にこう書かれています。
ただし、第三百十七条の二第一項の申告書に給与所得以外の所得に係る所得割額を普通徴収の方法によつて徴収されたい旨の記載があるときは、この限りでない。
e-Gov法令検索「地方税法」第321条の3第2項
申告書にその旨の記載があれば、給与以外の所得に係る分は合算されない。条文はそう書いています。ただし運用は市町村ごとに違い、第1項のただし書には、給与所得者が少ないなどの事情で特別徴収を行うことが適当でないと認められる市町村では特別徴収によらないことができる、という規定もある。最後は自分の住んでいる自治体に確かめるのが確実です。
口座を分けるのは、気分ではなく作業を減らすため
生活費と税の分と証拠金を同じ口座に入れておくと、月末に毎回いくら使っていいのかを考え直すことになります。分けるのは節約のためではなく、考える回数を減らすためです。
4つに分けて、月に1回だけ動かす
僕の場合は、入ってきたお金を4つに分けています。生活費、固定費、税と保険の分、証拠金。分ける比率は固定しておらず、その月の入金額に対して、税と保険の分を先に25%よけるところから始めます。残りを固定費、生活費、証拠金の順に埋める。
25%という数字に厳密な根拠はありません。所得税と住民税と国民健康保険と国民年金を足した実績が、独立してからの3年でだいたいその前後だったというだけです。多すぎたら年末に戻せばいい。足りないほうが痛いので、多めに置いています。
動かすのは月に1回、入金のあった週の週末だけと決めました。動かす回数を減らすと、口座の残高を見る回数も減ります。生活防衛資金の置き方は生活防衛資金の作り方に分けて書きました。
移動する月は固定費が固定費でなくなり、埋め合わせの先がいつのまにか証拠金になっていた
場所を変えながら暮らしていると、固定費という言葉があやしくなります。去年、2か月続けて移動した月の支出を見返したら、宿泊と移動でふだんの月より9万円ほど増えていました。家賃は払い続けているので、二重に住んでいる状態です。
それ以来、移動が入る月は「移動費」という5つ目の箱を先に作ってから予定を決めています。作らずに動いた月は、あとから証拠金のほうを削って埋めることになりました。あれがいちばんやってはいけない埋め方でした。生活のしわ寄せが、そのまま取引の判断に乗ってくるからです。
毎月やることを、5つだけ決めておく
- 入金のあった週の週末に、税と保険の分を先によける(僕は25%)。
- 固定費、生活費、証拠金の順に埋める。順番を入れ替えない。
- 移動の予定が入っている月は、先に移動費の箱を作る。
- 証拠金の口座に、生活費の引き落としを紐づけない。
- 年に1回、住民税の納付方法と申告書の記載を、自分の自治体の案内で確かめる。
この5つは、全部「先にやる」ことです。場所の自由でいちばん失われやすいのは、あとからやり直す余地のほうでした。26.9%の側にいるかどうかにかかわらず、先に分けておく手間は、あとで考える手間より軽い。
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