ソラノミチ

自由な働き方とFXの、現実的な距離感

自由に働くための資産分散の考え方

自由に働くための資産分散の考え方

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分散の話は、たいてい「何に分けるか」から始まります。その前に、日本にいる人たちがいま実際にどう置いているかを見ておきたい。日本銀行調査統計局が2026年8月31日に公表した資金循環の日米欧比較によると、2026年3月末時点で、日本の家計の金融資産2,386兆円のうち47.2%が現金・預金でした。

ほぼ半分が預金。この一点を知っているかどうかで、分散という言葉の意味が変わります。多くの人にとっての分散は「増やす方向へ広げる」ことではなく、「預金に寄っている重心を少しずらす」ことになるからです。僕自身、独立した年は現金の比率が8割を超えていました。

この記事で確かめること

日本・米国・ユーロエリアで家計の置き方がどう違うか/その表の「その他計」の読み方/分散の軸が資産クラス以外に何本あるか/FXを分散の道具と呼べない理由/税の区分が資産で分かれること。

日本は47.2%が現金・預金

まず日本から。2026年3月末時点の家計の金融資産構成は、現金・預金47.2%、保険・年金・定型保証24.5%、株式等16.7%、投資信託6.9%、債務証券1.5%、その他計3.2%でした。合計は2,386兆円です。

上位2つで71.7%。預金と保険・年金で7割を超えています。この構成は、増やすことより減らさないことを優先した並びに見えます。良し悪しの話ではありません。ただ、この並びのままで「分散しているか」と問われたら、答えは分散していない、になります。

米国は43.4%が株式等、ユーロエリアはその中間にいる

同じ資料に米国とユーロエリアも並んでいます。米国の家計は、金融資産141.6兆ドルのうち株式等が43.4%、保険・年金・定型保証25.7%、投資信託13.3%、現金・預金は10.7%。日本と米国で、現金・預金の比率は36.5ポイント違います。

ユーロエリアは35.5兆ユーロで、現金・預金31.1%、保険・年金・定型保証26.5%、株式等25.5%、投資信託12.1%。日本と米国のあいだにいます。3つを並べると、どれかが正解という話ではなく、制度と歴史で置き方が違うだけだと分かる。日本の47.2%を異常だと言うのも、米国の43.4%を真似ろと言うのも、どちらも乱暴です。

区分日本米国ユーロエリア
現金・預金47.2%10.7%31.1%
債務証券1.5%4.3%2.8%
投資信託6.9%13.3%12.1%
株式等16.7%43.4%25.5%
保険・年金・定型保証24.5%25.7%26.5%
その他計3.2%2.5%2.0%
金融資産の合計2,386兆円141.6兆ドル35.5兆ユーロ

「その他計」は残差だと、注記に書いてある

この表を引用するとき、一緒に持っていくべき注があります。図表2の下には、こう書かれています。

*「その他計」は、金融資産合計から、「現金・預金」、「債務証券」、「投資信託」、「株式等」、「保険・年金・定型保証」を控除した残差。

日本銀行調査統計局「資金循環の日米欧比較」(2026年8月31日)

その他計は独立した資産の種類ではなく、引き算で出した残りです。3.2%の中身が何かは、この図からは分からない。数字の見た目だけを追うと、6番目の資産クラスがあるように読めてしまいます。統計を引くときは、こういう注のほうが本体だったりする。

軸は3本ある

資産クラスの話ばかりしましたが、分ける軸はほかにもあります。僕が使っているのは3本です。

1本目が資産クラス。預金、保険、投資信託、株式、為替。2本目が通貨。円だけで持つか、外貨を混ぜるか。3本目が収入源です。稼ぎ方が1つしかない人は、資産をどれだけ分けても、入り口が1本のままになります。

この3本のうち、いちばん効いたのは3本目でした。独立してから2年目、為替の成績が2か月続けて振るわなかった月があります。そのとき生活が回ったのは、原稿の仕事が別にあったからです。資産の比率をいじっても、あの2か月は埋まらなかった。分散の話で資産クラスだけを扱うと、この軸が抜け落ちます。

FXを「分散」と呼ぶには無理がある

ここははっきり書いておきます。FXは分散の道具ではありません。理由は2つあります。

1つ目。通貨ペアを複数持っても、ドルを買う取引を3つ並べれば、それは1つの向きに3倍賭けているのと変わりません。銘柄名が違うだけで、動く理由が同じなら分かれていない。2つ目。証拠金取引は、預けた額より大きい取引額を動かします。金融商品取引業等に関する内閣府令が定める割合は百分の四。持っている資産の何割を割り当てたかという計算と、実際に動いている金額は一致しません。

だから僕は、資産配分の表にFXの欄を作るとき、証拠金として口座に入れている金額ではなく、そこで動かしている取引額のほうを横に書くようにしました。書いてみると、思っていたより重心が偏っていることが分かります。取引額を書かない配分表は、自分に都合よく見える表です。損失が預けた証拠金を上回ることもある以上、欄の作り方は慎重でいい。

比率の前に、入り口の数を数える

資産をどう分けるかより、収入が何本あるかのほうが先に効きます。1本しかないなら、2本目を作る時間のほうが、配分をいじる時間より価値が高い。配分の見直しは、入り口が増えてからでも遅くありません。

税の区分は、資産の種類ごとに分かれている

分散すると、税の扱いも複数持つことになります。国税庁のタックスアンサー No.1521 外国為替証拠金取引(FX)の課税関係(令和8年4月1日現在法令等)は、国内の第一種金融商品取引業者などを相手方とする店頭デリバティブ取引に該当するFXの差益について、他の所得と区分し「先物取引に係る雑所得等」として所得税15パーセント(他に地方税5パーセント)の税率で課税される、と書いています。

そして、差損については他の「先物取引に係る雑所得等」との損益通算は可能でも、それ以外の所得の金額とは通算できない。つまり、株式の利益とFXの損を相殺する、といった計算はできません。分散は資産の側だけでなく、申告の手間の側にも増えていきます。

増やす前に、その資産の税の区分がどこに属するかを1行で言えるかどうか。言えないなら、まだ増やす段階ではない。僕はここで一度、口座を4つから2つに戻しました。FXを「自由のための道具」として捉える考え方に、その経緯を書いています。

預けた47.2%も、どこかで動いている

預金は止まっているお金だと思われがちですが、同じ資料の別の図を見ると、そうでもないと分かります。図表1-1によると、2026年3月末の日本の金融機関の金融資産は合計4,618兆円で、そのうち預金取扱機関が2,427兆円を持っています。内訳を金融機関の金融資産合計に占める割合で見ると、預金取扱機関の貸出が23%、現金・預金が13%、債務証券が6%でした。

家計が置いた預金は、貸出や債券に姿を変えて外へ出ていきます。預金という置き方は「動かさない」のではなく、「動かす判断を他人に預ける」ことに近い。この言い方をすると身構える人もいますが、判断を預けるのが悪いという話ではありません。判断の数を減らす選択でもあります。

分散を考えるときに僕が気にしているのは、リターンの大小より、判断を自分で持つ割合のほうです。全部を自分で決める形にすると、決める回数が生活の中で増えすぎる。預金の比率が高いことには、回数を抑えるという副作用があります。

1年目の12月、金融資産の82%が普通預金だった

自分の数字も書いておきます。独立した1年目の12月に一度、口座を全部並べて計算したら、金融資産の82%が普通預金でした。残りの18%のうち、半分以上が為替の証拠金です。投資信託は3%、現金は2万円ほど財布に入っているだけ。

日本の平均が47.2%のところ、僕は82%。偏っているのは明らかでしたが、あのとき比率をいじらなかったのは正解だったと思っています。理由は、独立初年度で収入の見通しが3か月ぶんしかなかったからです。見通しの短さは、比率でなく時間の問題でした。比率を動かしても、見通しは伸びません。

2年目の秋に、原稿の仕事が定期で入るようになって、見通しが半年ぶんに伸びた。そこで初めて預金の比率を落としました。順番はいつもこれです。入り口が先で、比率はあと。ノマドワーカーのお金管理のほうに、月々の分け方を書いています。

生活防衛資金は、分散の輪の外に置く

もうひとつ、分けないほうがいいものがあります。生活が止まらないための現金です。ここを「現金の比率が高すぎる」という理由で動かし始めると、分散の議論が生活の議論に混ざります。

日本の家計の47.2%という数字は、分散の観点からは偏って見えます。それでも、そのうちのいくらかは動かしてはいけないお金です。統計の比率を自分に当てはめるとき、まず生活防衛資金を引いてから残りで考える。順番はそれだけのことです。置き方は生活防衛資金の作り方に分けました。

分け方より、分けた理由を覚えていること

最後に、分散をめぐって僕がいま思っていることを書きます。比率は、正解を探し始めると終わりません。日本の47.2%、米国の10.7%、ユーロエリアの31.1%。どれも実在する置き方で、どれも背景があります。自分の比率にも背景が要る。背景というのは、いつどんな理由でその比率にしたかという記憶のことです。

理由を覚えている比率は、相場が動いたときに崩れません。理由を忘れた比率は、下がった月に触りたくなる。僕が2年目に現金の比率を8割から落としたのは、収入の見通しが半年ぶんついたからでした。その理由を書き残してあるので、いまでもその水準を維持できています。逆に、なんとなく増やした欄は、だいたい1年以内に触っています。

分散は、資産を守る技術というより、自分の判断を減らす技術でした。分けておけば、ひとつが動いたときに全部を考え直さずに済む。考え直す回数が減ると、余計な判断も減る。自由に働き続けるために本当に要るのは、増える仕組みより、判断を増やさない仕組みのほうだと思っています。

涼
涼(りょう)
ノマド・専業トレーダー。拠点を一つに決めず暮らしながらFXと向き合っています。派手な成功談も根拠のない自由論も書かず、お金と働き方の現実的な距離感を等身大に綴っています。

FX(外国為替証拠金取引)は為替相場の変動により損失が生じるおそれがあり、預けた証拠金を上回る損失が生じる可能性があります(元本保証はありません)。本記事は情報提供・読み物を目的としたものであり、特定の取引や金融商品を推奨するものではありません。「必ず勝てる」「誰でも自由になれる」といった事実はありません。最終的な投資判断はご自身の責任で行ってください。掲載内容は執筆時点(2026年6月)の一般的な情報です。本サイトはアフィリエイト広告(成果報酬型広告)を利用する場合があります。

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