ソラノミチ

自由な働き方とFXの、現実的な距離感

自分のリスク許容度を知る

自分のリスク許容度を知る

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金融先物取引業協会が毎月出している未収金の表を、先日ひさしぶりに開きました。2026年7月、個人の口座で45件。金額は個人合計で5,342千円。前の月の6月は0件です。この並びを見て思い出したのが、自分が量を決められなかった時期のことでした。

当時の僕は、持つ量を「いくらまでなら耐えられるか」ではなく、「口座にいくら入っているか」で決めていました。証拠金が増えれば量を増やす。減れば減らす。一見まともに聞こえますが、この決め方には暮らしの側の事情がどこにも入っていません。だから、ある晩から眠れなくなった。金額では説明のつかない眠れなさでした。

この記事の立ち位置

許容度の正解を決める記事ではありません。公表されている数字を土台に、自分の線を引くための材料をそろえる話です。判断はご自身で。

許容度の出発点は、暮らしのほうにある

リスク許容度とは、いくらまで減っても暮らしと判断力が保てるか、の幅のことです。相場の側ではなく、暮らしの側から決まります。だから最初に見るべきは、チャートではなく毎月の支出です。

総務省統計局の家計調査報告(家計収支編)によると、2025年(令和7年)平均で、二人以上の世帯の消費支出は1世帯当たり1か月平均314,001円でした。同じ調査の2026年7月分は301,245円で、前年同月比は実質3.6%の減少。これは二人以上の世帯の平均であって、単身なら額は下がるし、住む場所でも変わります。自分の数字はこの平均とは違う。ただ、桁の感覚をつかむ足場にはなります。

僕の場合、月の支出は22万円前後です。この額をまず紙に書いて、そこから「3か月止まっても平気な額」「半年なら」と広げていきました。順番を逆にして、口座残高から許容度を決めると、暮らしの都合が最後まで出てきません。

眠れる量で測る

数字のうえでは耐えられても、眠れないなら持ちすぎです。僕はこれを、含み損の額ではなく回数で測るようになりました。夜中に口座を確認した回数。3回を超えたら、翌朝に量を半分にする。額で測ろうとすると「あと少し耐えれば」と言い訳ができますが、回数はごまかせません。

眠れない状態が続くと、翌日の判断が荒くなります。荒くなった判断で入った取引は、たいてい根拠が薄い。そこからさらに眠れなくなる。この輪に入ると、腕の問題ではなく体調の問題になります。メンタルの扱いはトレードとメンタルの付き合い方のほうに分けて書きました。

回数で測るようにしてから、もうひとつ分かったことがあります。眠れなくなる量は、その月の気分でも動くということ。引っ越しの前や、家族の具合がよくないときは、いつもと同じ量でも重く感じます。だから僕は、暮らしのほうに大きな予定があると分かっている月は、先に量を落としておくようにしました。相場の都合ではなく、こちらの都合で先に下げる。これが思ったより効きます。

証拠金がなくなったところが底、とは限らない

許容度の下限を決めるとき、多くの人が「最悪でも預けた分がなくなるだけ」と考えます。ふつうはそのとおりです。ただ、相場が急に飛んだとき、強制的な決済が追いつかず、預けた証拠金を超える損失が残ることがある。その残った分は未収金として業者から請求されます。

金融先物取引業協会のロスカット等未収金発生口座数(月次・速報)から、個人の欄を12か月分そのまま足してみました。2025年9月から2026年8月までで117件、6,574千円。1件あたりに直すと約56千円です。

期間個人・発生件数個人・発生金額
2026年2月20件328千円
2026年3月26件281千円
2026年6月0件0円
2026年7月45件5,342千円
12か月の合計117件6,574千円

この表で見てほしいのは大きさより、ばらつきのほうです。0件の月があり、45件の月がある。しかも7月は件数が2月の2倍強なのに、金額は16倍近い。1件あたりの重さが月によってまるで違うということです。だから僕は、許容度の下限を「証拠金の全額」ではなく、「証拠金の全額+追加で払える額」で考えるようにしています。追加で払える額がゼロなら、その前提で量を決める。

ここで注意したいのは、この表が示しているのは「起きた件数」であって「起きる確率」ではないことです。口座を持っている人が何人いて、そのうち何件かは分かりません。だから「自分がこれに当たる確率は低い」とも「高い」とも言えない。言えるのは、ゼロにはならない月があるという事実だけです。確率が分からないものに対しては、当たったときに生活が壊れない大きさにしておく。それ以外にできることは、たぶんありません。

負けた年の損は、3年持ち越せる

許容度の設計に効くのに、意外と知られていない制度があります。損失の繰越控除です。国税庁のNo.1523 先物取引の差金等決済に係る損失の繰越控除には、「先物取引に係る雑所得等」の金額の計算上生じた損失を翌年以後3年間にわたり繰り越せる、と書かれています。

ただし条件があります。同じページには、損失が生じた年分の申告書に付表と計算明細書を添えて提出し、その後も連続して付表を添えた確定申告書を提出すること、と手続が並んでいます。負けた年に「どうせ税金はかからないから」と申告しないと、この3年が使えません。負ける可能性を前提に量を決めるなら、負けた年の申告まで込みで設計する。ここまでがリスク管理です。

制度の形をよく見ると、損は3年かけて取り返す前提で作られています。翌年に利益が出なければ、その次の年、さらに次の年へと持ち越していく。つまり国の側も、この取引で毎年勝ち続ける人ばかりとは考えていない、ということです。僕はこの繰越の仕組みを知ってから、1年単位で勝った負けたを数えるのをやめました。数える単位を3年に伸ばすと、悪い月にむきになって取り返しにいく癖が、少しだけ薄れます。

なお、ここで言う損益通算や繰越の対象になるのは、国税庁No.1521 外国為替証拠金取引(FX)の課税関係にあるとおり、金融商品取引法上の「市場デリバティブ取引」または「店頭デリバティブ取引(「第一種金融商品取引業者」または「登録金融機関」を相手方とする取引に限ります。以下同じです。)」に該当する取引です。海外の無登録業者を使うと、この枠から外れます。

収入が止まる期間の長さで、線は動く

会社員か、専業か。同じ資産額でも許容度は変わります。理由は、収入が止まったときに支えてくれる期間が違うからです。

ハローワークインターネットサービスの基本手当の所定給付日数を見ると、倒産・解雇等以外で離職した一般の受給資格者は、被保険者であった期間が10年未満なら90日、10年以上20年未満で120日、20年以上で150日です。倒産や解雇にあたる特定受給資格者だと、45歳以上60歳未満で被保険者期間20年以上の場合は330日まで延びます。

雇われている人には、この日数ぶんの受け皿がある。自分で仕事をしている人には、原則としてありません。僕が専業に移ったとき、いちばん現実的に感じたのがこの差でした。だから専業になってからは、量を増やすどころか、会社員のときより小さくしています。受給の要件のほうも見ておくと、離職の日以前2年間に被保険者期間が通算して12か月以上あることが原則です。倒産や解雇にあたる場合は、離職の日以前1年間に6か月以上でも受けられます。会社を辞めてから気づいても遅いので、在職のうちに自分の期間を数えておくといい。土台の作り方は生活防衛資金の作り方に書きました。

量を決める順番を、紙に書いておく

ここまでの材料を、決める順番に並べます。順番が大事なのは、途中から始めると必ず口座残高が基準になってしまうからです。

順番決めること材料
1毎月の支出の実額家計簿、家計調査の平均(2025年平均は314,001円)
2収入が止まっても耐える月数基本手当の所定給付日数(90日〜330日)と自分の立場
3触らない資金の額1と2の掛け算
4相場に出せる上限総資産から3を引いた残り
51回の取引で失ってよい額4の数%など、自分で決めた割合
6眠れるかどうかの確認夜中に口座を見た回数

5の割合に正解はありません。僕は4の2%に置いていますが、これは僕の暮らしと性格に合わせた数字であって、誰にでも当てはまるものではない。大事なのは数値そのものより、1から順に降りてきたかどうかです。取引記録の残し方はFXの取引記録の残し方にまとめています。

自分の線を引いてから、環境を選ぶ

許容度が決まると、必要な機能もはっきりします。証拠金の管理画面が見やすいか、注文の種類が自分の決め方に合うか。条件は各社で変わるので、比べるときは公式サイトの最新の表示で確かめてください。

あなたの線は、どこにありますか

最後に、答えを出さずに問いだけ置いていきます。今月、収入がゼロになったとして、いまの貯蓄で何か月もちますか。その月数を半分にされても、同じ量を持ち続けられますか。証拠金を全部失ったうえで、さらに数十万円の請求が来たとき、支払えますか。夜中に口座を見た回数は、先週何回でしたか。

この4つに数字で答えられるなら、リスク許容度はもう決まっています。どれかで詰まったなら、そこが今週の宿題です。相場は逃げません。順番を守って降りてきた人だけが、悪い月に居合わせても席に残れます。

涼
涼(りょう)
ノマド・専業トレーダー。拠点を一つに決めず暮らしながらFXと向き合っています。派手な成功談も根拠のない自由論も書かず、お金と働き方の現実的な距離感を等身大に綴っています。

FX(外国為替証拠金取引)は為替相場の変動により損失が生じるおそれがあり、預けた証拠金を上回る損失が生じる可能性があります(元本保証はありません)。本記事は情報提供・読み物を目的としたものであり、特定の取引を推奨するものではありません。「必ず勝てる」「誰でも自由になれる」といった事実はありません。最終的な投資判断はご自身の責任で行ってください。掲載内容は更新時点(2026年9月)の一般的な情報です。本サイトはアフィリエイト広告(成果報酬型広告)を利用する場合があります。

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