
副業の確定申告の基本
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20万円、15パーセント、5パーセント、2.1パーセント、3年。副業と為替の申告まわりで出てくる数字は、だいたいこの5つです。順番に意味が違っていて、混ぜると話が合わなくなる。20万円は申告が要るかどうかの線、15と5は税率、2.1は税率に掛かる率、3年は損を持ち越せる年数です。
ここでは、この5つの数字がどこに書かれているかを、国税庁のページの文言に当たりながら並べていきます。僕は税理士ではないので、個別の判断はできません。書けるのは「どのページに何と書いてあるか」までです。自分の申告をどうするかは、最後は税務署か税理士に確かめてください。
会社員が副業や為替で利益を出したときに、申告が要るかどうかの線と、税率の決まり方、損が出た年の扱いまで。節税の方法や、個別の事情への当てはめは扱いません。
20万円を超えるかどうかで、やることが変わる
会社員は、ふつう年末調整で所得税の精算が終わります。だから確定申告をしない人が多い。ただし例外があって、その代表が20万円の線です。
国税庁のNo.1900 給与所得者で確定申告が必要な人に、こう書かれています。給与を1か所から受けていて、その給与の全部が源泉徴収の対象となる場合。ここで給与所得と退職所得を除く各種の所得金額の合計額が20万円を超える人は、確定申告をしなければならない。同じページには、給与の年間収入金額が2,000万円を超える人も並んでいます。
厚生労働省の副業・兼業の促進に関するガイドラインの18ページにも、同じ趣旨が一行だけ書かれています。「なお、副業・兼業を行い、20 万円を超える副収入がある場合は、企業による年末調整ではなく、個人による確定申告が必要である。」。労働分野の資料にまで書いてあるくらい、よく間違われる線だということでもあります。
超えるかどうかを見るのは、利益のほう
ここでいちばん多い読み違いが、20万円を取引した金額のことだと思ってしまうものです。見るのは所得、つまり利益のほうです。
年間に500万円分の売買をしていても、最後に残った利益が18万円なら線の下。逆に、1年で3回しか取引していなくても、利益が25万円出れば線の上です。金額の大きさではなく、手元に残った差額で決まります。
もうひとつ、20万円は「所得金額の合計額」で見ます。副業がひとつだけとは限らないからです。為替で12万円、文章を書く仕事で10万円なら、合計22万円で線を越えます。それぞれが20万円以下でも、足すと超えることがある。ここは自分の口座ごとに数えず、1年分を1枚に集めてから足してください。
それから、20万円の線は所得税の話であって、住民税のほうには同じ線がありません。所得税の申告が要らない場合でも、住民税の手続きが必要になることがあります。ここは自治体の案内に従うしかない部分です。「20万円以下だから何もしなくていい」と読み切らないほうが安全だと思っています。
2か所から給与をもらっている人には、別の注書きがある
給与を2か所以上から受けている人には、No.1900に別の条件が書かれています。この場合は、年末調整されなかった給与の収入金額と、給与所得・退職所得を除く各種の所得金額との合計額が20万円を超える人が対象です。
そのうえで注があります。給与の収入金額の合計額から、所得控除の合計額(雑損控除、医療費控除、寄附金控除、基礎控除を除く。)を差し引いた金額が150万円以下で、さらに各種の所得金額の合計額が20万円以下の人は、申告は不要とされています。条件が3つ重なっているので、どれかひとつを見て「自分は該当する」と決めないほうがいい。
この手の注書きは、読み飛ばすと逆向きに間違えます。僕は最初の年、注のほうだけ見て「150万円以下だから申告しなくていい」と思い込んでいました。実際には、その前段の条件を満たしていませんでした。
為替の利益は、給与と合算しない
会社員の副業でよくある原稿料や物販の利益は、雑所得として給与などと合わせて計算する形です。為替の利益はここが違います。
国税庁のNo.1521 外国為替証拠金取引(FX)の課税関係を見ます。差金等決済によって差益が生じた場合は、他の所得と区分すると書かれている。そのうえで「先物取引に係る雑所得等」として、所得税15パーセント(他に地方税5パーセント)の税率で課税される。これが申告分離課税です。
合算しないということは、給与が高い人も低い人も、この部分の税率は同じという意味になります。累進の税率表とは別枠で計算する。逆に言うと、給与のほうが赤字でもこちらの税率は下がりません。
損のときも同じで、枠が分かれています。No.1521には、差損が生じた場合、他の「先物取引に係る雑所得等」の金額との損益通算はできるが、それ以外の所得の金額との損益通算はできない、という趣旨が書かれています。副業の原稿料が黒字で、為替が赤字でも、両者を相殺することはできないということです。ここを期待して年末に無理な取引をしても、意味がありません。
0.315パーセントの正体
よく見る「20.315パーセント」という数字は、どこかに1本の条文があるわけではなく、足し算の結果です。内訳を分解します。
| 内訳 | 率 | 出どころ |
|---|---|---|
| 所得税 | 15パーセント | No.1521「所得税15パーセント(他に地方税5パーセント)」 |
| 地方税 | 5パーセント | 同上 |
| 復興特別所得税 | 基準所得税額の2.1パーセント | No.1521の注(平成25年から令和29年までの各年分) |
15パーセントに2.1パーセントを掛けると0.315パーセント。これを足して20.315パーセントになります。
ここに書き足しておきたい注記があります。No.1521には、令和9年1月1日以後に生ずる所得については復興特別所得税の税率が1.1パーセントに引き下げられ、防衛特別所得税が併せて源泉徴収される、という旨の記載があります。No.1522 先物取引に係る雑所得等の課税の特例のほうは、もう少し具体的です。令和9年分以後は、復興特別所得税額が基準所得税額の1.1パーセントとなる。そのうえで防衛特別所得税を、基準所得税額の1パーセントの税率で、所得税および復興特別所得税と併せて申告・納付する、と書かれています。数字が動く時期が決まっているので、来年以降に読む人は、その時点のページで確かめてください。
分離課税になるかは、誰を相手にした取引かで決まる
ここが、この記事でいちばん伝えたい部分です。為替の取引ならどれでも申告分離課税になる、というわけではありません。No.1521の書き出しを、括弧の中も含めてそのまま引きます。
金融商品取引法上の「市場デリバティブ取引」または「店頭デリバティブ取引(「第一種金融商品取引業者」または「登録金融機関」を相手方とする取引に限ります。以下同じです。)」に該当する外国為替証拠金取引(FX)の差金等決済(決済または行使もしくは放棄もしくは譲渡の総称です。)により生じた損益の課税関係は、次のとおりです。
国税庁「No.1521 外国為替証拠金取引(FX)の課税関係」
括弧の中の「に限ります」が効いています。相手方が第一種金融商品取引業者か登録金融機関である場合に限る、と書いてある。同じページの後半には、どちらにも該当しない取引の場合は、一般的には雑所得として総合課税の対象となり、課税総所得金額に応じた税率で課税される、とも書かれています。
つまり、どこに口座を作ったかで税率の決まり方そのものが変わります。国内で登録を受けた業者かどうかは、金融庁の登録業者の一覧で確かめられます。口座を作る前に見ておくのがいちばん早い。口座選びの見方はFX口座の選び方にも書きました。
損した年こそ、申告しておく
利益が出ていない年は、申告しなくていいと思いがちです。ここに、知っておくと効く制度があります。
国税庁のNo.1523 先物取引の差金等決済に係る損失の繰越控除を見ます。「先物取引に係る雑所得等」の金額の計算上生じた損失は、翌年以後3年間にわたり繰り越せる。繰り越された年分の「先物取引に係る雑所得等」の金額を限度に、差し引く形です。
今年40万円の損を出して、来年30万円の利益が出たとします。繰り越していれば、来年の課税対象はゼロにできる計算になります。繰り越していなければ、来年は30万円に対してそのまま税がかかる。同じ2年間でも、手続きの有無で結果が変わります。
損失の年が複数あるときの順番も決まっていて、前年以前3年以内の2以上の年分に損失があるなら、最も古い年分の損失から順に差し引きます。古いものから使う形。放っておくと、期限の来たものから順に消えていく。
繰越には、手続きの連続が要る
3年の繰越は、損を出しただけでは効きません。No.1523には、手続として3つが並んでいます。
- 損失が生じた年分の所得税について、確定申告書を提出すること。その申告書には申告書付表(先物取引に係る繰越損失用)と、先物取引に係る雑所得等の金額の計算明細書を添付する
- その後において連続して、上記の申告書付表を添付した確定申告書を提出すること
- 繰越控除を受けようとする年分の所得税につき、申告書付表と計算明細書を添付した確定申告書を提出すること
大事なのは2つめの「連続して」です。損の年に出して、翌年に出さず、その次の年に使おうとしても筋が通らない。利益がゼロの年も、付表だけは出し続ける必要があります。
僕はこれを、2年目の申告のときに一度落としかけました。その年は取引がほとんどなく、出す必要がないと思っていたからです。国税庁の確定申告書等作成コーナーで前年のデータを読み込んだときに、付表の項目が残っていて気づきました。気づかなければ、前年の損はそこで消えていたことになります。
為替以外の副業がある場合
副業が為替だけとは限りません。国税庁のNo.1906 給与所得者がネットオークション等により副収入を得た場合には、給与所得者の副収入として一般的に雑所得に該当するものが並んでいます。
挙がっているのは4つです。インターネットのオークションサイトやフリーマーケットアプリなどを利用した個人取引による所得。暗号資産の売却等による所得。民泊による所得。NFTを組成して第三者に譲渡したことによる所得。衣服・雑貨・家電などの売却も、具体例として書かれています。
ただし注があって、生活の用に供している資産、たとえば古着や家財の売却による所得は非課税とされ、この所得については確定申告が不要で、損失は生じていないものとみなされます。着なくなった服を売った分まで数える必要はない、ということです。数えるものと数えないものの線は、このページに書かれています。
会社に知られるかどうかは、断定できない
この話題は必ず出ます。でも僕は、断定して書けません。住民税の通知の扱いは自治体によって運用が違い、勤務先の給与計算の仕方でも見え方が変わるからです。
書けるのは、税の申告と就業規則は別の話だ、ということだけです。申告をしないことで規則の問題が消えるわけではないし、申告をしたから規則に触れるわけでもない。勤務先の規程がどうなっているかは兼業から始めるFXの現実のほうで扱いました。住民税の扱いについては、お住まいの市区町村の案内で確かめるのが確実です。
申告の前に、記録の置き場所を決める
年間の損益をまとめる作業は、記録がそろっていれば半日で終わり、散らばっていれば数日かかります。取引報告書を1か所に集める習慣を先に作っておくと、毎年の負担が変わります。各社の交付方法は違うので、公式サイトの案内をご確認ください。
やることを、番号で並べておきます
- 1年分の損益を1枚に集める。口座が複数あるなら全部を合わせる。
- 給与所得と退職所得を除いた所得金額の合計額を出し、20万円を超えるかを見る。
- 超えていれば申告へ。超えていなくても、損が出ているなら繰越のために申告を検討する。
- 相手方が第一種金融商品取引業者か登録金融機関かを確かめる。ここで課税の枠が変わる。
- 先物取引に係る雑所得等の金額の計算明細書を用意する。損があれば申告書付表も。
- 損を繰り越した年は、翌年以降も連続して付表を出す。利益がゼロの年も出す。
- 迷ったら税務署か税理士へ。この記事は判断の代わりにはなりません。
7番だけは、毎年自分に言い聞かせています。制度の文言は読めば分かる。分からないのは、自分の状況がその文言のどこに当たるかのほうです。そこは人に聞いたほうが早い。
FX(外国為替証拠金取引)は為替相場の変動により損失が生じるおそれがあり、預けた証拠金を上回る損失が生じる可能性があります(元本保証はありません)。本記事は情報提供・読み物を目的としたものであり、特定の取引や手続きを推奨するものではありません。税制は変わりうるものであり、申告の要否・所得区分・税率・控除額などは個別の事情によって異なります。具体的な判断は、必ず国税庁の情報・お住まいの地域の税務署・税理士にご確認ください。本記事の内容を最終的な判断材料にしないでください。最終的な判断はご自身の責任で行ってください。掲載内容は更新時点(2026年9月)の一般的な情報です。本サイトはアフィリエイト広告(成果報酬型広告)を利用する場合があります。



