
ノマドワーカーのお金管理
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場所を選ばずに働くと、お金の管理は口座の数の話だと思われがちです。僕の3年を振り返ると、効いていたのは口座の数ではありませんでした。1月1日にどこの住民基本台帳に載っていたか、部屋を引き払ったか、いつ届を出したか。この3つが、その年に出ていく金額を先に決めていました。
2024年は7か所で寝ました。ホテルが2か所、友人の家が1か所、残りは月単位で借りた部屋です。住民票は1か所のままです。移動そのものは自由ですが、制度の側は住所という1点で人を数えています。ここを読み違えると、翌年に請求書の形で戻ってきます。
節税の方法を並べる記事ではありません。条文に書いてある期限と線を引いたうえで、僕が実際にやっている分け方を書きます。自分の場合にどう当てはまるかは、お住まいの市区町村と所轄の税務署でご確認ください。
1月1日にどこの台帳に載っていたかで、その年度が決まる
地方税法第318条は、たった一文です。「個人の市町村民税の賦課期日は、当該年度の初日の属する年の一月一日とする。」同じ法律の第39条には、個人の道府県民税について同じ文が置かれています。
賦課期日という言葉は日常で使いませんが、意味は単純で、1月1日という一点で区切るということです。1月2日に引っ越しても、その年度は前の場所で数えられます。逆に12月30日に移れば、翌年度は移った先です。1年のうち364日をよそで過ごしても、この日だけが効きます。
僕がこれを覚えたのは、12月26日に荷物を運び出したのに、届を出したのが年明けだった年でした。ひと月ぶんの家賃を惜しんで動いたのに、1年ぶんの区分は前のままです。日付を1週間ずらすかどうかの判断が、そのあと12か月ついて回りました。
住所がなくても、部屋を残していると均等割が来ることがある
同じ地方税法の第294条第1項は、市町村民税の納税義務者を5つの号で並べています。第1号が「市町村内に住所を有する個人」。そして第2号に、こう書かれています。「市町村内に事務所、事業所又は家屋敷を有する個人で当該市町村内に住所を有しない者」。
第2号に当たる人は、条文の本文によれば均等割額により課されます。住所を移したあとも部屋を残している人、仕事用の場所を別に借りている人は、ここを読んでおいたほうがいい。移動しながら働く人ほど、拠点を1つに畳まないまま動きます。自分が当たるかどうかは条文だけでは決まらないので、残している場所のある市区町村に直接聞いてください。僕は2つの市に電話して、片方は該当しない、もう片方は要確認という返事でした。同じ条文でも、実際の運用は場所ごとに聞くしかない部分があります。
請求は4回に分けて、6月・8月・10月・1月に来る
同じ地方税法の第320条は、普通徴収の方法で徴収する個人の市町村民税の納期について、「六月、八月、十月及び一月中(当該個人の市町村民税額が均等割額に相当する金額以下である場合にあつては、六月中)において、当該市町村の条例で定める。」としています。ただし書きで、特別の事情がある場合はこれと異なる納期を定めることができる、とも書かれています。
会社にいた頃は、この4つの月を意識したことがありませんでした。給与から引かれていたからです。自分で払う側に回ると、6月と8月のあいだは2か月、10月と1月のあいだは3か月と、間隔が均等でないことに気づきます。3か月空いたあとの納付書は、こちらの財布の感覚からいちばん遠いところに来ます。
僕は移動が多いので、納付書が手元に届かない月が出ました。いまは口座振替にして、税と社会保険料の口座から自動で落としています。振替日は納期の月に集まるので、その口座の残高は6月と1月にいちばん減る。年の初めに使いすぎないのは、この2か月のためです。
転出は「あらかじめ」、転入は14日以内
届出の期限は住民基本台帳法にあります。第24条は「転出をする者は、あらかじめ、その氏名、転出先及び転出の予定年月日を市町村長に届け出なければならない。」と定めています。あらかじめ、です。出てからではありません。
第22条のほうは日数で切ってあります。転入をした者は「転入をした日から十四日以内に」届け出なければならない、とされ、届け出る事項が第1号から第7号まで並びます。氏名、住所、転入をした年月日、従前の住所、世帯主についてはその旨と世帯主でない者については世帯主の氏名及び世帯主との続柄、転入前の住民票コード、そして国外から転入をした者などについては政令で定める事項。
14日という数字は、移動しながら暮らすと意外に短い。僕は一度これを落としました。荷物を運んだのが月曜で、役所に行けたのがその2週間と3日あとです。窓口では遅れた理由を書く紙を渡されました。手続き自体は30分ほどで終わりましたが、そのあと国民健康保険の切り替えが1か月分ずれて、翌々月の納付書がふくらみました。期限を落とすと、落としたところではなく別の場所から返ってきます。
住所があるかないかは、気持ちではなく職業で推定される
国外にも出る人にとって、いちばん誤解しやすいのが住所の有無です。所得税法施行令第14条第1項は、国内に居住することとなった個人が次のいずれかに該当する場合は国内に住所を有する者と推定するとして、第1号に「その者が国内において、継続して一年以上居住することを通常必要とする職業を有すること。」を挙げています。
第15条は裏返しです。国外に居住することとなった個人について、第1号は「その者が国外において、継続して一年以上居住することを通常必要とする職業を有すること。」。どちらも、本人がどう思っているかではなく、職業がどれだけの期間の居住を必要とするかで見ています。
3か月ずつ国を移る働き方は、この条文の書き方とはうまく噛み合いません。僕は自分で判断せず、税務署の相談窓口で自分の年間の滞在の形を説明しました。20分ほどの相談でしたが、少なくとも自分の勘で決めるよりは足元が固まります。判定を間違えると、申告の枠組みそのものが変わってしまうので、ここは調べるより聞くほうが早い。
送金には、報告が要る線が引いてある
外国為替及び外国貿易法第55条第1項は、居住者や非居住者が本邦から外国へ向けた支払をしたときなどについて、「政令で定める場合を除き」、その内容や実行の時期などを主務大臣に報告しなければならない、と定めています。銀行等や資金移動業者の為替取引による場合は、第2項により、その銀行等を経由して報告するのが原則です。
除かれる「政令で定める場合」の中身が外国為替令第18条の4第1項にあり、第1号が「財務省令又は経済産業省令で定める小規模の支払等」。その小規模がいくらかは、外国為替の取引等の報告に関する省令の第1条が書いています。「三千万円に相当する額以下の支払等とする。」
僕の送金は月に10万円前後で、この線には遠い。それでも線の位置を知っているかどうかで、まとまった額を一度に動かすときの判断が変わります。報告する事項も外国為替令の第18条の4第3項に並んでいて、報告者の氏名及び住所又は居所、支払又は支払の受領の別及びその金額、支払等の実行の日、などです。自分で報告書を書く場面は多くありませんが、銀行の窓口で使途を聞かれる理由は、このあたりにあります。
口座は用途で分け、締め日で回す
ここからは制度ではなく、僕のやり方です。口座は3つに分けています。生活費の口座、税と社会保険料だけを置く口座、取引の証拠金を置く口座。分けた理由は防御ではなく、数える手間を減らすためでした。1つにまとめていた頃は、月末に残高を見ても、その数字が何を意味するのか10秒では分かりませんでした。
入金があったら、その日のうちに決めた割合で移します。僕は税と社会保険料の口座へ3割です。多すぎる年もありますが、足りないよりは扱いやすい。余ったぶんは翌年の1月に生活費へ戻します。
締め日は毎月26日にしました。家賃、通信費、保険、サブスクリプションの合計を1枚の紙に書き出して、前の月との差だけを見ます。所要は15分です。見るのは残高ではなく差額。ぶれるのは収入のほうなので、出ていく側を固定できていれば、月ごとの上下に手を出さずに済みます。
通貨は分けすぎないようにしました。一時期は3通貨で持っていましたが、両替のたびに手数料と時間がかかって、管理のための管理になっていた。いまは円と、滞在先で使う1通貨の2つだけです。
収入の見方も変えました。月ごとに数えると、良い月と悪い月の落差に反応してしまう。いまは3か月をひとまとまりにして、四半期の合計だけを記録しています。2025年は第1四半期がいちばん少なく、第3四半期がその2倍を超えました。月で見ていた頃は、この形が見えずに、悪い月のたびに生活のほうを縮めていたと思います。
1年のどこで何が起きるか、並べておきます
| 時期 | 起きること・やること | 根拠と確認先 |
|---|---|---|
| 1月1日 | その年度の個人住民税の区分が決まる | 地方税法第318条・第39条 |
| 引っ越す前 | 転出届をあらかじめ出す | 住民基本台帳法第24条 |
| 転入した日から14日以内 | 転入届を出す(届出事項は第1号から第7号) | 住民基本台帳法第22条 |
| 部屋を残したまま移るとき | 家屋敷などに当たるかを残した先の市区町村に確認 | 地方税法第294条第1項第2号 |
| 国外に長く出るとき | 住所の推定がどちらに転ぶかを税務署に相談 | 所得税法施行令第14条・第15条 |
| まとまった額を送る前 | 3,000万円の線と、銀行経由の報告の要否を確認 | 外国為替及び外国貿易法第55条ほか |
| 毎月の締め日 | 固定費の合計と前月との差だけを見る | 自分の家計簿 |
この7行のうち、自分で決められるのは最後の1行だけです。上の6行は日付も期限も他人が決めています。移動しながら働くというのは、決められた日付のほうに自分の予定を合わせるということでもありました。
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