ソラノミチ

自由な働き方とFXの、現実的な距離感

兼業から始めるFXの現実

兼業から始めるFXの現実

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「副業」という言葉に、法律上そろった定義はありません。厚生労働省が出している副業・兼業の促進に関するガイドライン(平成30年1月策定、令和2年9月改定、令和4年7月改定)が扱っているのは、雇用や業務の掛け持ちです。為替の売買はそこで想定されている形とは性質が違います。だからといって「就業規則に触れない」と決めつけるのは早い。最初に読むべきは、会社が配っている規程のほうです。

僕が会社員をやりながら為替に触れていたころ、この整理ができていませんでした。総務に聞くのも気が引けて、なんとなく黙ってやっていた時期が半年ほどあります。ここでは、制度の文言と公表されている統計を並べながら、本業を持ったまま相場と付き合う距離の取り方を書きます。専業をすすめる話ではありません。

この記事で確かめること

国のガイドラインが「制限してよい」と書いている4つの場合/モデル就業規則の条文の言い回し/確定申告が要る20万円の線/見ていない時間に口座で起きていること。

国が「制限してよい」と書いているのは4つの場合だけ

ガイドラインは、裁判例の整理として次のように書いています。引用します。

副業・兼業に関する裁判例では、労働者が労働時間以外の時間をどのように利用するかは、基本的には労働者の自由であり、各企業においてそれを制限することが許されるのは、例えば、① 労務提供上の支障がある場合 ② 業務上の秘密が漏洩する場合 ③ 競業により自社の利益が害される場合 ④ 自社の名誉や信用を損なう行為や信頼関係を破壊する行為がある場合 に該当する場合と解されている。

厚生労働省「副業・兼業の促進に関するガイドライン」3ページ

同じページには、厚生労働省が平成30年1月に改定したモデル就業規則の文言も載っています。「労働者は、勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる。」。書いてあるのは「他の会社等の業務」です。為替の売買は、どこかの会社に雇われて働くことではありません。

ただ、会社の規程は国のひな型どおりとは限らない。僕の勤め先の規程には「投機的行為」という一語が入っていて、これが何を指すのか、読んでも判断がつきませんでした。判断がつかないなら、勝手に解釈しないで人事に聞く。聞きにくければ、せめて自分の会社の条文を一度は最後まで読んでおく。ここを飛ばすと、あとで一番めんどうなことになります。

20万円という線は、税のほうの話

よく聞く「20万円」は、就業規則の話ではなく税の話です。ガイドラインの18ページにも「副業・兼業を行い、20 万円を超える副収入がある場合は、企業による年末調整ではなく、個人による確定申告が必要である。」と書かれています。

元をたどると国税庁のタックスアンサーです。No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人に、こう書かれています。給与を1か所から受けていて、その全部が源泉徴収の対象である場合。ここで給与所得と退職所得を除いた各種の所得金額の合計額が20万円を超える人は、確定申告をしなければならない。同じページには給与の年間収入金額が2,000万円を超える人も並んでいます。

この20万円には注書きが付いています。同じNo.1900には、給与を2か所以上から受けている人について、給与の収入金額の合計額から所得控除の合計額(雑損控除、医療費控除、寄附金控除、基礎控除を除く。)を差し引いた金額が150万円以下で、さらに各種の所得金額の合計額が20万円以下の人は申告が不要、という注がある。条件が3つ重なっているので、「20万円以下なら誰でも申告不要」と読むと外します。

それから、超えるかどうかを見るのは利益の額であって、取引した金額ではありません。年間に何百万円分の売買をしていても、最後に残った利益が20万円以下なら線の下です。逆に、取引回数が少なくても利益が出れば線を越える。ここを取り違えて「たくさん売買したから申告が必要」と思い込んでいる人に、僕は2回会ったことがあります。

確認することどこに書いてあるか
他の会社等の業務に従事してよいか厚生労働省のモデル就業規則、および勤務先の就業規則
制限が許されるのは4つの場合副業・兼業の促進に関するガイドライン3ページ
20万円を超えたら確定申告国税庁タックスアンサー No.1900
為替の利益は申告分離課税国税庁タックスアンサー No.1521

平日に使えた時間は、朝20分と夜30分だった

時間の話をします。僕が兼業だったころ、平日に相場へ向けられたのは、朝の出勤前に20分、帰宅後に30分ほどでした。合計1時間に届かない。最初は「夜に2時間は取れる」と見積もっていたので、半分以下です。

この差を認めないまま続けると、短い時間で結果を出そうとして、本来なら手を出さない場面でボタンを押します。日中も値動きが気になって、会議の合間にスマホを覗く。どちらも、時間が足りないことを受け入れていないから起きます。逆に「自分には1時間ない」と先に認めてしまえば、その中でできることだけに絞れる。時間の少なさは弱点ではなく、やらないことを決める材料でした。

絞ったのは2つです。平日は新しく持たない。持っているものの手じまいだけ、朝の20分でやる。分析や振り返りは土曜の午前にまとめる。これで平日の判断は「閉じるか、閉じないか」の1択になりました。判断の種類が減ると、寝不足の朝でも迷いません。

週末にまとめる形にしてから、記録が残るようになったのも大きかった。平日に思いつきで動いていたころは、なぜその値段で入ったのかを翌週には忘れていました。土曜の午前に前の週を書き出すと、同じ失敗を2度書く回が出てきます。その2度目が来たときに、ようやく自分の癖として直せる。

見ていない時間に、証拠金以上の損失が出ることがある

兼業でいちばん危ないのは、日中に画面を見られないことです。相場が飛んだとき、強制的な決済が間に合わず、預けた証拠金を超える損失が残ることがあります。これは想像の話ではなく、統計として毎月公表されています。

金融先物取引業協会が出しているロスカット等未収金発生口座数(月次・速報)の数字を並べます。法人を除いた、個人の欄だけを取り出しました。

年月発生件数(個人・合計)発生金額(個人・合計)
2026年5月2件19千円
2026年6月0件0円
2026年7月45件5,342千円
2026年8月1件6千円

6月はゼロ。7月は45件で、うち店頭取引が43件、金額は個人合計5,342千円でした。件数がゼロの月と40件超の月が隣り合っています。つまりこれは、毎月まんべんなく起きるものではなく、何かあった月にまとめて出るものだということ。日中ずっと画面を見ていられない人ほど、この「何かあった月」に居合わせる確率を織り込んでおいたほうがいい。持つ量の決め方はトレードのリスク許容度をどう決めるかに分けて書きました。

本業があるうちに済ませておくと、後で楽になること

兼業のうちにやっておくと後で効くことが、いくつかあります。ひとつは口座の分離。生活費の入る口座と、為替に使う口座を物理的に分けておく。もうひとつは、取引報告書の保存場所を決めておくこと。申告の時期に1年分を探し回ると、それだけで週末がつぶれます。

僕は、兼業2年目の2月に一度これで痛い目を見ました。年間の損益をまとめようとしたら、口座を移した前半の記録がどこにも見当たらない。結局、取引業者のサイトから再発行してもらって、2日かかりました。国税庁の確定申告書等作成コーナーを開く前に、手元の記録を1か所に集める。順番はそれだけのことです。本業の時間との折り合いはFXと暮らしを両立させる時間の使い方でもう少し具体的に扱っています。

兼業のリズムに合う環境を、焦らず探すなら

1日1時間に満たない時間で相場に触れるなら、生活のリズムに合う取引環境かどうかが、続くかどうかを分けます。各社の条件は変わるので、比較は必要になってから、公式サイトの最新の表示で確かめるくらいでちょうどいい。

地味さを引き受けた人が、結局は長く続く

兼業のFXは地味です。使える時間は朝と夜で合わせて1時間に届かず、本業の疲れも残っている。派手な結果は出ません。それでも、規程を読む。20万円の線を知る。見ていない時間に起きうることを数字で把握して、持つ量をそこから逆算する。この順番を守れる人は、相場から退場しにくい。僕が兼業の3年で得たのは利益より、この順番のほうでした。会社員でいるあいだの安定は、自由を縛るものではなく、判断を落ち着かせてくれる土台でもあります。

涼
涼(りょう)
ノマド・専業トレーダー。拠点を一つに決めず暮らしながらFXと向き合っています。派手な成功談も根拠のない自由論も書かず、お金と働き方の現実的な距離感を等身大に綴っています。

FX(外国為替証拠金取引)は為替相場の変動により損失が生じるおそれがあり、預けた証拠金を上回る損失が生じる可能性があります(元本保証はありません)。本記事は情報提供・読み物を目的としたものであり、特定の取引や働き方を推奨するものではありません。「必ず勝てる」「誰でも自由になれる」といった事実はありません。最終的な投資判断・働き方の判断はご自身の責任で行ってください。掲載内容は更新時点(2026年9月)の一般的な情報です。本サイトはアフィリエイト広告(成果報酬型広告)を利用する場合があります。

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