
移住・地方で働くときのお金の話
※本記事には広告(PR)を含む場合があります。
地方に移ると生活費が下がる、という話は半分だけ当たっています。下がる項目と上がる項目があって、合計がどちらに転ぶかは移る先と自分の暮らし方で変わる。ここまでは、移住の記事のほとんどが書いていることです。
僕が引っかかっていたのは、その手前でした。そもそも人はどちらに動いているのか。移った先で収入はどうなるのか。この2つを公表されている数字で確かめてから、自分の移動の話を書きます。拠点を一つに決めずに暮らしている僕は、厳密には移住者ではありません。それでも、同じ数字を見ています。
移住を勧める記事でも、やめておけという記事でもありません。総務省と厚生労働省が公表している数字を引いたうえで、自分の支出と手続きの実際を並べます。制度や支援金の条件は自治体ごとに違うので、移る先の窓口でご確認ください。
転入が超過しているのは、7都府県だけ
総務省統計局の住民基本台帳人口移動報告 2025年(令和7年)結果によると、都道府県別の転入超過数で転入超過となっているのは、東京都、神奈川県、埼玉県など7都府県です。転入超過数がいちばん多いのは東京都で6万5219人。神奈川県が最も拡大していて、その幅は1089人でした。
7都府県ということは、残りの40道府県は転入超過ではないということです。移住という言葉が持つ雰囲気とは、向きが逆になっています。移る人がいないのではなく、同じ県から出ていく人のほうがもっと多い。
前年から向きが変わった県もあります。同じ報告には、滋賀県は前年の転出超過から転入超過へ転じ、山梨県は前年の転入超過から転出超過へ転じた、と書かれています。1年で反転する程度の幅ということです。移住先を県単位の評判で選ぶと、こういう入れ替わりを追いかけることになります。
転入超過とは別に、社会増減という数え方も同じ報告に載っています。転入と転出の差に、国外との出入りや住所地不詳などを足し引きしたものです。こちらで社会増加となっているのは東京都など23都道府県で、東京都が12万5457人、大阪府が5万8524人、千葉県が4万2629人。社会増加数が最も拡大しているのは愛知県で、その幅は9298人でした。
転入超過は7都府県、社会増加は23都道府県。数え方をひとつ変えるだけで、増えている地域の数が3倍以上になります。移住の記事でよく見る「人が集まっている地域」という表現は、どちらの数え方をしているかで指す場所が変わる。自分が読んでいる記事がどちらを使っているかは、確かめたほうがいい。
3大都市圏の数字は、そろって同じ向きではない
同じ報告の3大都市圏の欄を見ると、東京圏は12万3534人の転入超過で、前年に比べて1万2309人の縮小。名古屋圏は1万2695人の転出超過で、前年に比べ6161人の縮小。大阪圏は8742人の転入超過で、前年に比べ6063人の拡大です。
日本人移動者に限った数字では、東京圏が11万2738人の転入超過で30年連続、名古屋圏が9561人の転出超過で13年連続、大阪圏が7503人の転入超過で3年連続と整理されています。30年と13年。この2つの数字を並べると、都市圏という一語でまとめられないことが分かります。
僕が最初に長く滞在したのは、名古屋圏の外れにある町でした。住んでいるあいだは、街が静かになっていく感じを言葉にできなかった。13年連続という数字を見て、自分が見ていたのは13年のうちの1年だったのだと分かりました。
動いている人の数そのものは、減っていない
同じ報告の全国の欄には、2025年の国内における市区町村間移動者数は519万548人で前年に比べ0.3パーセントの減少、都道府県間移動者数は251万5731人で前年に比べ0.3パーセントの減少、とあります。500万人以上が市区町村をまたいで動いていて、その半分弱が県境も越えている。
国外との出入りも載っています。国外からの転入者数は78万2165人で前年に比べ6.3パーセントの増加、国外への転出者数は40万9592人で前年に比べ10.2パーセントの増加です。出ていく側の伸び率のほうが大きい。
移住は珍しい選択ではありません。珍しくないからこそ、雰囲気ではなく条件で比べたほうがいい。人が動いていること自体は、自分の移住がうまくいく根拠にはならないからです。
賃金の全国計を上回るのは、4都府県だけ
収入側の数字も見ておきます。厚生労働省の令和7年賃金構造基本統計調査の概況には、こう書かれています。「都道府県別の賃金をみると、全国計(340.6 千円)よりも賃金が高かったのは4都府県(東京都、神奈川県、愛知県、大阪府)となっており、最も高かったのは、東京都(418.3 千円)となっている」。
ここでいう賃金は、概況の注記によれば、令和7年6月分として支払われた所定内給与額の平均です。賞与も残業代も入っていません。千円単位なので、全国計は34万600円、東京都は41万8300円ということになります。差は7万7700円。1年に直すと93万2400円です。
全国計を上回るのが4都府県だけ、というのは、裏返せば43都道府県が全国計より下だということでもあります。生活費が下がるかどうかを考える前に、収入側の基準線がどこにあるかを見ておく。移住の計算で先に動くのは、たいてい収入のほうです。
もうひとつ、この調査の賃金は都道府県ごとの1つの平均値だという点も押さえておきます。同じ県の中でも、産業や企業規模や年齢で数字は動きます。移る先の県の値が全国計より低いからといって、自分の仕事の値がそのまま下がるわけではない。逆に、県の値が高くても、自分が就く職種の値がそこにあるとは限りません。使い方としては、県ごとの差がどれくらいの桁で起きるのかを掴むための線だと思っています。
僕は移る先を検討するとき、この概況の数字と、実際に募集が出ている求人の提示額を並べて見ました。県の平均より低い提示のほうが多かった。それ自体は驚きではありませんが、平均を見ただけで判断すると、届く金額を2割ほど高く見積もることになります。
持ち運べる収入があっても、それは安定した収入という意味ではありませんでした
ここは僕の立場の話です。為替の取引は、回線と端末があれば場所を選びません。ただ、場所を選ばないことと、収入が安定することはまったく別です。移動しても損益の振れ幅は変わりませんし、移動先の生活費が下がっても、負けた月は負けたままです。持ち運べるのは仕事の道具であって、結果ではありません。
移住を検討している人から、取引で生活費をまかなえば土地を選ばずに済むのでは、と聞かれたことがあります。順番が逆だと思っています。先に生活費の側を固めておかないと、相場のほうに生活を合わせることになる。地方に移って固定費が下がるなら、その効果は、取引の金額を増やす余地ではなく、取引をしなくていい月を作れることのほうに出ます。
実際に困ったのは、収入の額ではなく時間帯でした。取引をする時間は日本時間の夜に偏ります。地方の町では、夜に開いている店がほとんどありません。都市にいた頃は、夜に働いて昼に外に出る生活が成り立っていましたが、移った先では昼に用事を済ませられる店の営業時間が短く、生活のほうを先に動かす必要がありました。持ち運べたのは仕事で、持ち運べなかったのは生活のリズムのほうです。
住民票を動かすことが条件になっている仕事もある
移る先で仕事を探す道のひとつに、総務省の地域おこし協力隊があります。説明にはこうあります。「地域おこし協力隊は、都市地域から過疎地域等の条件不利地域に住民票を異動し、地域ブランドや地場産品の開発・販売・PR等の地域おこし支援や、農林水産業への従事、住民支援などの『地域協力活動』を行いながら、その地域への定住・定着を図る取組です。」
隊員は各自治体の委嘱を受け、任期はおおむね1年から3年。令和6年度は10代から60代以上までの総勢7,910名が活動していて、任期後の定住率は約70パーセントと書かれています。
注目したいのは、住民票を異動することが前提に置かれている点です。前の記事で書いた住民税の賦課期日や届出の期限が、そのまま自分の話になります。移住を仕事の形から入る場合、手続きは付属品ではなく条件そのものです。
任期が1年から3年というのは、住まいと仕事を同時に試せる期間だとも読めます。一方で、任期が終わったあとの生活をその期間のうちに作らないといけない、という意味でもあります。定住率が約70パーセントということは、残りの人は任期後に別の場所へ動いているということです。この数字を高いと見るか、そうでないと見るかは、自分が何年単位で暮らしを考えているかによります。
僕は隊員になったことはありません。ただ、任期のある仕事で土地に入るという形は、移住のいちばん難しい部分を先送りせずに扱っている気がします。移住が難しいのは、住むことでも働くことでもなく、その2つを同時に決めないといけないところなので。
下がる費用と、上がる費用を同じ紙に書く
ここからは僕の実額です。滞在先を変えるたびに、同じ形式で3か月ぶんを記録しています。家賃は東京の部屋で月9万2000円、地方の町では月4万3000円でした。差は4万9000円。ここだけ見れば移ったほうがいい。
上がった項目もあります。移動はバスが1日4便で、実質は車が要りました。軽自動車を借りて月2万8000円、燃料が月8000円前後、任意保険が月4700円。冬の暖房は灯油で、いちばん寒い月は1万4000円かかりました。その月で足すと5万4700円の増加になり、家賃の差4万9000円はそこで消えます。
それでも移った価値がなかったとは思っていません。消えたのは差額であって、暮らしの中身は入れ替わっています。歩く距離が増え、外食が月に2回まで減り、夜の時間が静かになった。数字が同じでも、使い道が変わったということです。ただ、これを「生活費が下がった」と説明するのは正確ではありません。
金額に出ない変化もありました。病院までが車で25分。以前は歩いて7分でした。緊急のときにどうするかを、移ってから考えることになった。買い物は週に1度まとめてするようになり、冷蔵庫の中身が増えて、食費は月に4000円ほど下がっています。
逆に増えたのが移動の時間です。用事を1つ済ませるのに、往復で1時間かかる日がありました。時間は家計簿に載りませんが、こちらのほうが暮らしへの影響は大きかった。移住の費用を見積もるときは、金額の表の横に、移動時間の欄を1つ足しておくといいと思います。
回線は最悪の日で決める
取引をする以上、回線は道具です。町の光回線は下り速度の公称値では足りていましたが、僕が困ったのは平均ではなく、年に数日の落ち方でした。雪の日に2時間つながらなかったことが1度あります。その日は、開いていた建玉を朝のうちに整理していたので影響は出ませんでした。
いまは回線を2系統にしています。固定回線と、別の会社のモバイル回線。月の追加負担は3000円台です。相場を見るためというより、つながらない時間帯を作らないためのお金だと思っています。移住の費用を見積もるとき、この項目は家賃や車の下に埋もれがちです。
あなたは、どちらの数字で決めますか
解説の代わりに、問いを4つ置いていきます。移る先の県は、7都府県のどれかに入っていますか。入っていないとしたら、出ていく人のほうが多い場所で、自分は何を理由に残りますか。移る先で得る収入は、全国計の34万600円という線に対してどこに立ちますか。下がる費用と上がる費用を、同じ紙に、同じ月数で書き出しましたか。
4つとも答えが出ているなら、移る理由は誰かの体験談ではなく自分の数字になっています。どれかが空欄なら、空欄の項目が今週調べることです。僕は3つ目を空欄のまま動いて、1年目に予定を組み直しました。
FX(外国為替証拠金取引)は為替相場の変動により損失が生じるおそれがあり、預けた証拠金を上回る損失が生じる可能性があります(元本保証はありません)。本記事は情報提供・読み物を目的としたものであり、特定の取引や働き方、移住を推奨するものではありません。「必ず勝てる」「誰でも自由になれる」といった事実はありません。移住先の費用や制度は地域によって異なるため、具体的な情報は現地の情報や自治体の案内でご確認ください。最終的な判断はご自身の責任で行ってください。掲載内容は執筆時点(2026年6月)の一般的な情報です。本サイトはアフィリエイト広告(成果報酬型広告)を利用する場合があります。



