
FXのトレード記録は何を書く?続く5項目
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トレードの記録が続かないのは、根気の問題ではないと思っています。書く項目を自分で決めようとするからです。会社を辞めた年の春、僕はスプレッドシートに12列つくって、3週間でやめました。埋まらない列が4つあって、埋まらない列があると開くのが億劫になる。
そのあとで気づいたのは、何を書くかはすでに決まっていた、ということでした。決めたのは僕ではなく、金融商品取引法の下にある内閣府令です。この記事では、府令が挙げている項目をそのまま写し、そこから僕が5つだけ残した経緯を書きます。
記録をつければ利益が出る、という話ではありません。条文と国税庁の説明書に書いてある項目を引いたうえで、僕が手元に残したものを並べます。自分の申告がどの区分に当たるかは、所轄の税務署でご確認ください。
何を書くかは、府令がすでに決めている
金融商品取引法第37条の4は、業者側の義務をこう定めています。「金融商品取引業者等は、金融商品取引契約が成立したときその他内閣府令で定めるときは、内閣府令で定めるところにより、遅滞なく、顧客に対し、当該金融商品取引契約に関する事項その他の内閣府令で定める事項に係る情報を提供しなければならない。」
ここで言う「内閣府令で定める事項」の中身が、金融商品取引業等に関する内閣府令の第99条と第100条に並んでいます。第99条第1項は共通の項目で、第4号が「当該金融商品取引契約の成立、第九十八条第一号の解約又は同条第二号の払戻しの年月日」、第5号が「当該金融商品取引契約、第九十八条第一号の解約又は同条第二号の払戻しに係る手数料等に関する事項」です。
デリバティブ取引についての追加項目が第100条第1項にあります。第2号が売付け等か買付け等かの別、第3号が「銘柄(取引の対象となる金融商品、金融指標その他これらに相当するものを含む。)」、第4号が「約定数量(数量がない場合にあっては、件数又は数量に準ずるもの)」、第5号が「単価、対価の額、約定数値その他取引一単位当たりの金額又は数値」、第6号が「顧客が支払うこととなる金銭の額及び計算方法」、第7号が「取引の種類」。第8号には「前各号に掲げる事項のほか、取引の内容を的確に示すために必要な事項」とあります。
年月日、売りか買いか、銘柄、数量、単価、支払う金額、取引の種類。7つです。僕が12列つくったとき、この7つのうち3つが抜けていて、代わりに「今日の気分」が列になっていました。
12列から5列に減らして、2年続いた
いま残しているのは5項目です。日付、通貨ペア、売りか買いか、数量、手数料を引いたあとの損益。府令の7項目から、単価と取引の種類を落としました。落とした理由は単純で、僕はドル円とユーロ円の2つしか触っていないので、取引の種類の欄が毎回同じ文字列になるからです。毎回同じ値しか入らない列は、3日で見なくなります。
捨てた列のほうが多い。エントリーの根拠、そのときの感情、反省、翌日への申し送り、チャートの画像。全部やめました。根拠の欄は、書いた3週間のあいだに17行埋めましたが、読み返したのは1回だけです。感情の欄は、勝った日は「落ち着いていた」、負けた日は「焦った」としか書いていなかった。自分の言葉が2種類しかないなら、列にする意味がありません。
代わりに、5項目の下に1行だけ自由欄を置いています。書かない日は空欄のままにする。空欄でいい、と決めたら続くようになりました。2024年の秋から数えて、いまも同じシートを使っています。
それと、もうひとつ。口座を3回乗り換えたとき、業者側の履歴は前の口座に置き去りになりました。自分の手元にある5列だけが、乗り換えをまたいで残っています。記録の意味を実感したのは、勝った負けたを振り返ったときではなく、口座を移した日でした。
15パーセントの計算と、「生じなかつたものとみなす」の一文
記録が効くのは、年に一度、数字を集める日です。租税特別措置法第41条の14第1項は、差金等決済による所得について「他の所得と区分し、その年中の当該先物取引による事業所得の金額、譲渡所得の金額及び雑所得の金額として政令で定めるところにより計算した金額」に対し、その「百分の十五に相当する金額に相当する所得税を課する」と書いています。所得税と併せて復興特別所得税もかかります。
同じ項の最後には、もう一文が置かれていました。「この場合において、先物取引に係る雑所得等の金額の計算上生じた損失の金額があるときは、同法その他所得税に関する法令の規定の適用については、当該損失の金額は生じなかつたものとみなす。」
生じなかつたものとみなす、という言い方は、条文にしては強いほうだと思います。負けた年の損失は、給与や他の所得からは引けない。引けるのは、次に説明する繰越の枠の中だけです。だから記録の役割は、反省材料を貯めることより、この枠を使える形で数字を残しておくことのほうが先に来ます。
3年繰り越すには、出し続けないといけない
国税庁の先物取引に係る雑所得等の説明書には、繰越控除の説明があります。損失の金額を「翌年以後3年間にわたり繰り越し、その繰り越された年の先物取引に係る雑所得等の金額を限度として、一定の方法により、先物取引に係る雑所得等の金額の計算上差し引くことができる」。
手続のところに、見落としやすい条件が付いています。損失が出た年について申告書付表と計算明細書を添付した確定申告書を提出し、「かつ、その後において連続して確定申告書(上記の申告書付表等を含みます。)を提出しなければなりません」。つまり、損失の出た年だけ出して終わりではない。取引がほとんどなかった年も、続けて出す必要があります。
繰り越せる期間は3年です。損失の金額が前年以前3年内の2以上の年分に生じているときは、同じ説明書によれば「これらの年のうち最も古い年分に生じた先物取引の差金等決済に係る損失の金額から順次差し引きます」。古いほうから消えていく順番なので、どの年の損失がいつ期限切れになるかは、自分の記録にしか書いてありません。僕はシートの右端に、損失が出た年と、その年から数えた3年目の年を書き足しました。
帳簿を7年持つ人と、そうでない人がいる
保存の年数は、所得の区分で変わります。国税庁のNo.2080 白色申告者の記帳・帳簿等保存制度には、収入金額や必要経費を記載した法定帳簿は7年、それ以外の任意帳簿と、請求書・納品書・送り状・領収書などの書類は5年、と表で示されています。
ただし、この制度が名指ししているのは、不動産所得・事業所得・山林所得のある人と、業務に係る雑所得のある人で前々年分のその収入金額が300万円を超える人です。後者に当たる場合は、現金預金取引等関係書類を5年間保存することとされています。さらに前々年分の収入金額が1,000万円を超える人は、確定申告書に収支内訳書などの添付が必要になります。自分がどれに当たるかは、所轄の税務署で確認してください。ここを勘で決めないほうがいい。
同じページには、令和5年分の確定申告に対する修正申告等から、売上げに関する帳簿を保存していなかったことなどが税務調査で把握された場合、通常課される過少申告加算税・無申告加算税の割合に「5パーセントまたは10パーセント」が加重されることになった、とも書かれています。保存していない、という状態そのものに値段が付いたわけです。
僕はシートをクラウドに置いたまま、年末に一度だけPDFに書き出して手元のディスクに落としています。作業は毎年12月28日、所要は20分ほど。台所の棚にノートパソコンを置く前の、その年の最後の作業です。
昨日の1行は、これだけです
- 日付:2026年7月6日
- 通貨ペア:ドル円
- 売り/買い:買い
- 数量:3,000通貨
- 損益(手数料等を差し引いたあと):マイナス780円
- 自由欄:空欄
6行です。書くのに40秒かかりません。この6行が積み上がると、年に一度、申告の数字が自分の手元だけで揃います。府令の第100条が挙げている7項目のうち、自分にとって毎回変わる欄だけを残す。残す欄を決めるのは自分ですが、候補を考える必要はありません。候補はもう条文に書いてあります。
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